世界三大投資家のジム・ロジャーズさんと共著『大暴落~金融バブル大崩壊と日本破綻のシナリオ』を出版し、1年近くが経つ。ニッポン放送でジムさんの「最新の視点」を紹介した。
同書の監修・翻訳を担当したシンガポール在住の花輪陽子さんが先月末にジムさんに取材したところ、ドナルド・トランプ米大統領の関税政策について、「歴史的に関税は世界に不利益を与える」といい、最悪のケースでは1930年代の大恐慌のようになるという。
先月、一時的に円高にふれたが、「日本は人口が減り、債務が増えており、深刻な問題を抱えていることに変わりはない」と、長期視点で、日本破綻を警戒し、円安トレンドは変わらないとの見立てだ。私もまったく同感だ。
加藤勝信財務相は今月2日、民放番組で日本が保有している米国債の売却も交渉カードだと述べて、すぐに撤回した。あれは悪手に感じた。そもそも本当に売る度胸があるのか。「売られたら困るだろう?」という、駆け引きで、トランプ大統領が白旗を上げるタイプではない。大人の交渉においては、相手が一番嫌がることは、口にすべきではない。下手な駆け引きよりも、論理的に「ウィンウィン」を提示し続けるべきだ。
元モルガン銀行東京支店長の藤巻健史参院議員とも先日話した。選挙を前にして与野党から消費税減税の声があるが、原資は赤字国債で、現実的には、また日銀が引き受けるしかない。禁じ手の財政ファイナンスに手を染めた国は、歴史上ハイパーインフレに見舞われている。
藤巻氏はブログで、「元来政治家は目に見える税金を増税すると選挙で落ちるから、目に見えず非難されにくいインフレ税を選択しがち。結果、消費税は無くなったが、米1キロ100万円の世界が到来する。これは消費減税を主張する低所得者層には壊滅的に厳しい」と、減税してもインフレ税が課せられる危険性を説く。
他国と違い、日銀は金利をあげてインフレをコントロールすることができない。藤巻さんが国会質問で答弁を引き出したが、日銀が抱える、国債とETF(上場投資信託)を合わせた評価損は、すでに2兆円となっている。あとは、約13・8兆円の自己資本を食いつぶすと、いよいよ債務超過だ。そうなると、国債の格付けにも影響するだろう。
藤巻さんの試算では0・1%の金利が上がると3兆円の評価損になるため、日銀はこれ以上、大幅には金利を上げられない。
今月13日にワタミは決算会見を行った。令和7年3月期の営業損益は45億4000万円(前年同期比21・2%増)で、主力3事業で増収・営業増益となった。内容も上々だ。M&A(合併・買収)をした、日本サブウェイの、のれん代を一括で償却し、海外2社の買収は成功し、宅食事業では2年がかりで作った、低価格弁当を今秋全国販売するなど、攻めの体制が並ぶ。
しかし、本当の勝負は、金融危機、財政破綻の後だと思っている。国民は、この国の決算が悪すぎると、政治家に怒るべきではないだろうか。
【産経ニュース】「渡邉美樹経営者目線」(隔週水曜日連載)より