(1)疲れとれず舞台降板
1981年、刑事ドラマ「太陽にほえろ!」のラガー刑事役でデビューした。舞台俳優やテレビタレントなどとして活躍、昨年、芸能生活30周年を迎えた。
体に異変が起きたのは、節目の年から1年が過ぎた今年3月頃のことだ。
「はあはあ」。温泉街の石段を上るテレビ番組のロケ。途中で息が切れて思わずひざの上に手を乗せた。体力には自信があったのに。不安がよぎった。
確かに一時130キロを超えたこともある肥満体。糖尿病の持病もあるが、血糖値は改善していた。
次第に寝ても疲れがとれなくなった。「顔色悪いですよ」。5月に主演する舞台が控えていたが、そのけいこ場でも、心配したスタッフから声をかけられるようになった。
元気や楽しさを与えること。それが自分の仕事だと信じてきた。そんな自分が周囲に気遣われるようになった。4月、断腸の思いで舞台の降板を決めた。芸能生活で初めてのことだった。
「糖尿病が原因でしばらく自宅で静養すれば治る」。そう思っていた。でも体調は一向に良くならない。食べ物のにおいをかぐと吐き気がするようになった。5日間、ヨーグルトしか食べられなくなり、点滴をしようと近くのクリニックに足を運んだ。
その時は、まさかこんな事態になるとは夢にも思わなかった。
(2)冠動脈1本 完全に詰まる
「すぐに処置しないと危険な状態です」
食事がのどを通らないため、点滴をしてもらおうと出かけた自宅近くの医院。医師が、思ってもいない言葉で切り出した。聴診器で異常が見つかったため、エックス線検査を受けたところ、肺に水がたまり、心臓肥大も判明したのだ。
大病院での検査を勧められた。付き添いのマネジャーが運転する車で向かおうとすると、医師に止められた。「救急車を呼びます。そんな状況ではありません」
搬送された病院で受けた精密検査で、虚血性心疾患と診断された。「冠動脈の1本が完全に詰まっている」と医師が告げた。
心筋梗塞に近い状態だったが、幸いにも周囲の毛細血管が発達していたため、血流は途絶えておらず、大事には至らなかった。
「しっかり治そうね」
病室に駆けつけた妻でタレントの榊原郁恵さんは、そう言ってくれた。
結婚はデビューから6年後の1987年。デビュー時、70キロ台前半だった体重が130キロまで増えた。テレビドラマなどへの出演でストレスが重なり、過食を続けていたからだった。
それから妻の手料理による、二人三脚のダイエット作戦が始まった。減量とリバウンドを繰り返しながらも、80~90キロ台にまで落ちていた。ある程度、ダイエットに成功して自分の健康のことを楽観視していた。