先日

 

久しぶりに ご近所の友人たちと

ランチ会をした

 

 

その日のメンバーは

皆 私より年長で

 

会話の端々に出る ちょっとした言葉に

自分の 来るべき老後への

心の持ちよう 覚悟など

学ぶべき点が てんこ盛り

 

とても 有意義な時間だった

 

 

 

その中でも

特に 印象深かったのは

 

昨年 配偶者を亡くし

今は 一人暮らししている

Rさんの 話

 

 

 

 

実はね 私

 

娘の住む家の 近くに

いい物件があったら

そこに引っ越すのもアリかな って

思って

 

先週

娘と 家を探しに行ってきたのよ

 

 

えっ 引っ越す?

 

初めて聞く話に

私は びっくりした

 

しかも そこまで 具体的に

動いているなんて

 

全然 気が付かなかった

 

知り合って もう15年以上になる

友だちなのに

 

 

納得がいかなくて

私は

思わず 聞いてしまった

 

 

どうして?

 

老後って

何より 友人が

頼りになるんじゃないの?

 

長く この街に住んでいて

お友だちも たくさんいるのに

 

 

すると

他の人たちも

友人が遠くに行ってしまう 寂しさも

手伝ってか


次々

彼女の決断に 疑問を呈し始めた

 

そうよ

子どもには 子どもの生活があるし

考えも あるんだから

 

とか


知り合いがいない 土地では

子どもたちが傍にいても

そのことが 却って

孤独を感じることにも なるらしいわよ

 

 とか



でも Rさんは

 

う~ん…


と 言葉を濁して

 

もちろん しばらくは

今の家も キープしておくつもりよ

 

そう言って 話題を変えた

 

 

それよりさ

聞いて


不動産を観に行く 前日

 

気に入った物件が あったら

即決する気 満々で


銀行に ン百万の手付金を

下ろしに行ったのよ

 

そしたらね

実に不愉快なことが あったの…

 

 

Rさんは

その時の怒りが 蘇ったようで

だんだん 声が大きくなった

 

 

窓口の人がね

 

この大金は 何に使うんですか

 

って聞くの

 

そんなの

あなたにカンケーないでしょ

 

って思ったけど

 

自分が住む マンションの

手付金に つかうんです

 

って 素直に答えたのよ

 

 

そしたら 今度は

 

ご主人は

このことを 把握してますか

 

 

主人は 去年 死にました

 

では

お子さんか 誰か近しい方と

電話で話すことは できますか?

 

って

次々と うるさく聞いてくるの

 

 

おかしいと思わない?

 

いくら 昨今

オレオレ詐欺で

騙される高齢者が 多いからって

 

これ

私の口座に入っている 私のお金よ


 下ろす理由も

きちんと説明してるのよ



さすがに ムッとして

 

なんで 子どもとかに

連絡する必要が あるんですか

 

そう 言い返したわよ

 

 

Rさんの その言葉に

周りの友人たちも

 

あ わかるぅ

私も この間

銀行の窓口で うるさく聞かれて

すごく不快だった

 

とか

 

今 物価 すごく上がっているけど

こんなこと 言われるくらいなら

タンス預金のほうが まだマシね

 

などと 次々に同調するので

Rさんの声は

ますます大きくなった

 

 

だからね 私

 

じゃ もういいです

他の銀行に行きます

 

お宅との取引は

今後 一切しませんから

 

って言って

帰ろうとしたのよ
 

 

そしたらね

 

奥から 慌てて

エラそうな人が出てきたの

 

お店の奥に 連れて行かれて

 

お茶まで 出されて

 

 

先程は

窓口の者が 大変失礼をいたしまして

申し訳ございません

 

只今 お調べいたしましたところ

〇〇様には

当店を長年 ご愛顧いただいており

本当に感謝いたしております

 

な~んて 慇懃に挨拶が始まって

態度が 豹変しちゃって

 

 

あらまあ

取引しない って言ったのが

効いたのかしら

 

やっぱり 銀行員って

現金を扱うだけに 現金なひとたちね

 

な~んて思ってたら…

 

 

なんと!

 

突然!

 

目の前に

警察官が現れたのよ

 

 

そして その警官

どうしたと思う?

 


私の顔を 覗き込みながら

やたら スローテンポの

大きな声で 言ったのよ

 


おくさん


きょうは


なんの ようじで


ぎんこうに こられたんですか

 

 

その 瞬間

 

気づいたのよ

 

 

私が 何を言おうと

 

どう振る舞おうと

 

周りの人全員が

私のことを

 

最初から 最後まで

 

詐欺に騙されてるのに

騙されれてることに 気づけない

哀れな 高齢者

 

としてしか

見ていなかったんだって

 

 

Rさんは

苦々しそうに 言い捨てた

 

日本って

ホント いい国よね

 

社会で 守ってあげるべき

弱者に対して

み〜んな

はなまる付けたいくらい

親切だったわよ

 

 

 

Rさんの話を

友人たちは 黙って聞いていた

 

多分 みんなの頭には

同じ言葉が 浮かんでいたと思う

 

キット

自分モ ソウ 扱ワレル…

 

 

  Rさんは

そんな 静寂の中

言葉を続けた

 

 

だけどね

 

後から

冷静になって 考えたのよ

 

 

私 年齢からして

世間では もう

立派なおばあちゃんよね

 

体も 頭も

大分 ポンコツになって

 

年金も もらってる

 

 

今まで守ってくれてた 夫も

いなくなった

 

 

自分では

 

私は 私

中身は 何も変わってない

 

そう思っていたけど

 

 

でも 社会では

いろいろな場面で

対等な相手足りえない

 

そんな存在に

なってきてるんだなって

 

しかたないやって

 

それが 現実なんだなって

 

思ったのよ

 

 

 

そして

Rさんは

 今度は みんなと

しっかり 目線を合わせるようにして

言った

 

 

だからね

 

最初の話に 戻るけど

 

色々 迷いもあったんだけど

 

今だったら

まだ 私

 

仕事を持つ 娘のために

ごはんをつくったり

孫の面倒を見たりして

役に立つことが できるから

 

だから

やっぱり

娘の近くに 引っ越そうって

 

そう 思ってるの

 

 

 



 

私が まだ知らない

いろいろなことを

 

経験して

感じて 見えている

人生の先輩の 言葉は


重い

 

 

 

私も

60代後半になって

最近は

年上扱いされることも 多くて

 

けっこうなことが

見えてるような気が してたけど

 

 

まだまだ 若輩者だなあ と

 

わかってないことが あるんだなあ と

 

そんなことを思った

一日だった