今月に入ってから「さいたま市のマンション入り口で女子高生が刺殺された」「東京メトロ東大前駅で乗客が切りつけられた」「千葉市内の路上で高齢女性が刺殺された」と、全然面識のない人を傷つけるという信じられない事件が相次いだ。
どの犯人も、理由の一つとして自身の「家庭のせい」を挙げている。
そんな身勝手な……と思う一方、「でもなあ」とも思ってしまう。
スイミングのシャワー室で、たまに会う姉妹。二人で髪や体を、半分遊びながら洗い合っている
幼稚園最年長児と最年少児くらいの年齢だと思うが、初めて会ったときからものすごく親しげに話しかけてきた。
今や、「知らない人としゃべってはいけません」と厳しく言って聞かせている親が多いと思ったのだが、彼女ら平気で手を握ってくるし抱きついてくる。そして、幼稚園であったこととか食べたものとか、まだ十分でない言葉で一生懸命しゃべってくるのだ。
シャワー室の周りには、親がいっぱいいる。洗髪を手伝っている親も何人かいる。でも、その姉妹は自分たちでやっている。そういう教育方針なのかもしれないし、お迎えに来るのがシャワータイムに間に合わないのかもしれない。
あるとき、背中にシャンプーが残っていたので、思わず私は手を出してしまった。もちろん、彼女らは警戒もせず、私の行為を特別のこととも思わず、むしろ抱っこしてくれと言わんばかりの状況だった。
そんな中、どこか近いところから「早くして!」と大人が呼びかける声が聞こえた。
シャワー室付近では子どもや親がごった返しているので、誰が誰に言っているのか一瞬わからなかったが、なんとその声の主、姉妹の母親だったのである。
その母親、彼女らの行動、私の行動を逐一見ていた。それどころか、彼女らと会うとき、いつもシャワー室の前でスマホをガン見している若い女性だったのである。
そして、これまで、ただの一度も私に声をかけてきたことはない。
普通なら「いつもすみません」とか「ありがとうございます」とかいうべきところではないか。もしくは、それこそ「知らない人と話したらダメ!」でも構わない。
この母親は、子供と私が全く眼中にない。そして関心もない。
彼女らが、ある意味、異常なほど私に抱きついてくる理由は、そのせいではないのか。
スイミングでのワンシーンだけで判断したら間違うとは思うが、もしかしたらこういう子供たちが大きくなって、さいたま市や千葉市での事件を起こすようにならないか。
教員をしているトモから聞く、いわゆるモンスターペアレントの話も、耳を疑うようなものが多い。
いくら親や家庭がひどくても、だから他人を傷つけてもいいという理由には絶対ならないが、犯人を責めるだけでは済まないことがそこにはある。
今度スイミングでその姉妹と母親に会ったら、どういう態度で接すればいいのか、何だか私気が重い。
だがおそらく、彼女らはもちろん、若い母親も、全く何とも思っていない。
彼女らの 小さな手のひら 柔らかき
鞠子